mogyjunwich.com 茂木淳一 公式WEBサイト
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心の店
「心の店」とは
WWWを始めとするネットワークの発展にともない、よりローコストな無店舗販売が注目されている。しかし、自ら店鋪に足を運ぶことでしか味わえない感動があるはずである。それは商品の手応えであり、店の佇まいであり、店のご主人の強烈な体臭(口臭)である。
※一般投稿の取り扱いは終了いたしました.誠にありがとうございます.
 
「Chrysanthemum Fidelity」(クリサンセマム フィデリティ) 20040726 茂木淳一(千葉レーダ)
厳格だった祖父の1周忌が落ち着くと、祖母は高齢者向けのインターネット講座に入門した。
電子メールならいつでも会話ができると多少大袈裟に提案したのは彼女の孫にあたる私だが、学生時代に私が彼女にねだって買わせた今となっては貧弱なノートパソコンの液晶に毎夜遅くまで熱心に見入る姿は痛々しく、後悔したが、「まことさんめーるおくります」と書かれたメールを事務所で受信した時はヒヤリとした。
それからの彼女は燃えるようで、自らの意思で光ファイバを契約し、WEBオークションで落札したらしいサーバ機や無停電電源、それを収めるラック等が届くと仏壇の横に組まれ、畳を軋(きし)ませた。
丸く穏やかで口数の少ない彼女だったが、WEBの世界では毅然とした態度で悪を糾弾し、そのやり口は見事で世界中に支持者を持つことを知ったが、弱者には柔らかく、子供や学生に無料でサーバ領域を与えた。
雰囲気の異なるいくつかのサイトを運営しておりどれも盛んだったが、驚いたのは彼女のプライベートな話題が中心のサイト上に「孫とのコミュニケーション手段のつもりで始めたこの世界にすっかり浸かり、今では孫に与えるべき小遣いも全て運用資金に充てていることを申し訳なく思う。」と英文で書かれていたことだった。
簡素ながら使い勝手の良いこのWEBサイトは「Chrysanthemum Fidelity」(クリサンセマム フィデリティ)と名付けられ、それが彼女の名前「菊」と私の名前「誠」に由来すると知り、私は声を出して泣いた。
     
アーバンソーダチャージ「炭酸ボーイ」 20040414 茂木淳一(千葉レーダ)
内外の炭酸飲料が楽しめる店。
巷ではエチケット違反とされる行為だが、同店では込み上げる二酸化炭素を自由に吐き出すことができる。
強く太いブロウ・オフが歓迎される店内には、昼夜を問わず力強い呼気とそれを称(たた)える叫び声が吹き荒れて止まない。
13種の特許取得技術が盛り込まれたオリジナルソーダチャージャから注がれる強炭酸飲料「Derringer」(デリンジャ:大統領暗殺にも使用された小型拳銃の名に由来)はプラスティックのカップが音を立てて揺れるほどで、飲み切らないうちに喉の奥よりガリガリと熱いビブラートが吹き返す。
音色やエンベロープのチューニングから会話に取り入れるテクニックまで、女性店員によるデモンストレーションも親切で初心者や女性でも安心して吹ける。
店内は胃袋の匂いで満ちている。
 
焼き菓子「志り今(しりこん)」 20040130 茂木淳一(千葉レーダ)
土間の石臼から延びたワイヤは板戸を貫き、奥座敷のエクササイズマシン(バタフライ)に繋がっている。
ココナット油と噴き出す汗で赤黒く光る上半身を露(あらわ)にした老婆が、ない歯を食いしばって胸筋を引き絞る度に石臼がゾリンゾリンと力強くドングリを挽き散らかす。
想いをめぐらせては、木の実の投入をしばしば忘れるため、粉の半分は石で、これが強烈な歯応えの原因とされている。
自ら放つ熱い小便で練り上げる焼き菓子は、淡い期待と共に硬く小さく焼き上げられる。

この辺りでは珍しい外国製の上品な帽子を被った紳士が時々訪れては、箱詰めにされたそれらを持たされるが、帰り道の土手、いつも決まった場所に捨てるので、すっかり草が枯れた。
男は自分が相応しくないことを良く知っていた。
  
擦り和牛料理専門店「擦庵(すりあん)」 20031030 茂木淳一(千葉レーダ)
「精肉後に料理人が擦(こす)るんじゃないんです。まだ牛としての営みの中ですでに擦れていることが大切なんです。わかりますか?」と毛羽立った顔で熱っぽく話す経営戦略室室長炒豆徹(イリマメトオル)氏。納得のいくまで擦れた固体と出会えることは極めて稀であるという。過去に数十億円以上を牛を擦ることに費やしたという室長。機械で擦ったり、強い風を当てたり、アルバイトの学生が数人がかりで寝ずに擦っても意味がないのだという。機械の動きが強すぎて牛が機械のアームに絡まり、仕方なく発砲したこともあると言う。「(牛の)眼を見れば分かりますよ。」炒豆氏 の挑戦は始まったばかりだ。(月刊「グルメ伝説」より)
 
そっくりハウス「そっくス」 20031017 茂木淳一(千葉レーダ)
店主が熱演する動物の鳴き声が、近隣のリサイクル店から無料で譲り受けた古いPA(音響装置)から爆音で溢れ不評。
玩具店からの転身で傾いた経営がさらに傾き転地が入れ替わろうとも、店頭に設置された店長自作の総アルミホイル貼りの鳥小屋(鳥が穴をくぐるとランプが光り警告)に鳥は集まらない。
常連客が構成する歴代総理大臣のそっくりさんチーム(14名)による「荒城の月」は 不評。
ビール無料。
 
ナイト・サパア「TOKYOアラビアンナイツ」 20030924 茂木淳一(千葉レーダ)
重厚な扉を軋(きし)ませると贅沢な照明類は消灯しており、薄っすらと砂を被った総天然大理石のエントランス中央で機能を停止した噴水ユニットが静かに出迎える。 ホールに入ると深緑色ビロード地で揃えられた調度品は奥の壁に押し付けるかたちで整然と積み上げられ、中央には円卓がひとつ。それを囲むかたちで着席しているのはそれぞれ何らかの理由で登校することができない市内を中心とした学生たちで、日々声高にディスカッションを繰り返している。「制服の是非」から「駅北口放置自転車対策」、「食欲と衛生について」、「タイヤの野焼き」等、全ての議題は持ち回りで担当する書記により克明に記録され保管される。非公式ではあるが、美術教師(52歳、男性)が時々顔を出し自分の改造バイクの自慢をして帰る。
 
現場主義「アクシデント」 20030924 茂木淳一(千葉レーダ)
10トントラックが突っ込んだ自宅に衝撃と発想を得て開店。松脂と針金で巧みに補強しながら2年と4ヶ月運営してきたプロパンガス臭い店内は事故当時のままだが、あと3週間は持たないと言うのがテレビ番組取材時に派遣された専門家の見解。ガスが漏れている可能性がある。
  
大佐の部屋 20030924 茂木淳一(千葉レーダ)
年老いてなおその張り詰めた背筋(せすじ)に往年の威厳を保つ大佐ではあるが、目が合えば自慢の三日月刀を確かな筋肉で振りかざし、人懐っこい頬で出迎えるように見え、その 実ガラス張りの厨房から1歩たりと外出することはない。大佐の心意気は情念となり、黒く硬い炎となって厨房の天まではびこっている。自らの目に映るものしか理解しない大佐は、全ての生きるための行為を厨房で行い、ひと時としてそこを離れることはない。甘味と争いごとを生きがいとする大佐が練り上げる金色(こんじき)の マドレーヌには、霧雨のようにさんざめいては降り注いだ、彼の分身、蛍光灯の破片が練り込まれては回収される。
 
革命市場「ポケット」 20030915 茂木淳一(千葉レーダ)
実銃・実弾を販売、及び発砲。
営業停止。
  
フルーツハウス「コヤナギ」 20021121 茂木淳一(千葉レーダ)
時の流れを感じさせる黒く煤(すす)けた総タイル張りの店内には、埃を被ったビンテージ缶詰が無造作に並ぶ。
引き戸の奥の部屋で老夫婦が生活しているが、店舗とは関係ない。
無休。24時間営業。
 
紳士服「孤漫堂(コマンド)」 20021121 茂木淳一(千葉レーダ)
仕立て背広の専門店。 全身を脱力してもそのままたっていられる程にきつく仕立てられた背広を自ら身に付け、「背広はおしゃべりだからね」と店長。
毛足の長い上等なカーペットの上で2匹のドーベルマンがそれぞれよだれを流し続ける。
高級な食事を与え、散歩はしないのが店長の主義。
 
メキシカン・ダンサブル「サボテンの唄」 20021121 茂木淳一(千葉レーダ)
客の前で生きた鶏の羽根を燃やすところから調理が始まるチキンピラフは正真正銘のワイルドスタイル。
燃やされる鶏と客に提供されるチキンピラフの鶏肉が別であることから、その筋の団体から激しい糾弾を受けている。
店頭にディスプレイされていた大型バイクは盗難車と判明。
 
スポーツマン・シップ「ヘラクレス」 20021121 茂木淳一(千葉レーダ)
オリジナルスポーツクリーム「ヘラクレス」を使用した局所的な筋力アップ、ダイエットコンサル、自家製ソーセージ(観賞用)の販売他。
親身な対応、適切な処方は業界御用達。
クリームのみの販売はしない。
男色家のサロンとしても有名。
   
リサイクルショップ「エルサレム」 20010218 千葉レーダ
石や袋詰めの砂が売られている。
大きい物には数万〜数十万の値がついており、その値段は直接石にマジックインキで書込まれているので分かりやすい。
店主が石を足で転がして店終いする様は不謹慎である。
 
子供服の「アンドロメダ」 20010218 千葉レーダ
あくまでも噂だが、どうやら女店長は人間ではないらしい。
機嫌の良い時は銀色の球体で仲間に連絡を取る。
 
ハンドルショップ「政宗」 20010218 千葉レーダ
店内には、大変良さそうなチタニウム製、革巻きハンドルがひとつだけ展示されている。
値札はついていない。
 
焼肉倶楽部「タッチダウン」 20010218 千葉レーダ
もうこれ以上焼く必要のない肉が次々とサーヴされる。
肉に目がない体格の良い若者が激しく討論し、食欲も旺盛。
しばしばマスタが厳しく笛を吹き鳴らし、タッチダウンを告げる。
   
とんかつの「ゴールド」 20010218 千葉レーダ
でっぷりと太ったイタリア人が経営する創作とんかつの店。
肉は皿の上で立ち上がり、こちらを睨み付ける風情。
 
創作料理「味のサイクロン」 20010218 千葉レーダ
お薦めは「サウンド in ハンバーギ」。
サッカボール状に丸く揉まれた肉の中に音源が埋め込まれており、こもった音で「Jリーグの曲」が流れ続ける。
肉は古く臭い。
 
プロショップ「政子」 20010218 千葉レーダ
不動産屋のように見えるが、ガラス戸の内側からアルミホイルが貼ってあり、店内は見えない。
 
生フラメンコパブ「フラメント」 20010218 千葉レーダ
毎週火曜オールナイトは、フリードリンク+フリーナッツ+踊り放題で680円!
フラメンソ斉藤率いる「ラ・フラメンツ」は圧巻。
クロークなし、着席不可。
冬期休業。
これはもうフラメンコじゃない!
  
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